バイマンスリーワーズ
中小企業らしい成功戦略を立て、見事に遂行している企業を除けば、ほとんどの中小企業で急激な業績悪化に陥っています。
昨年対比10%ダウンならまだ健闘の部類で、今年4月以降では20%ダウン企業が続出しています。
私も顧客企業で同じような傾向が現れ、その緊急対策に東奔西走の毎日が続いています。
その中で私が強く感じ、わかってきたことがあります。
それは、今回の不況で苦しんでいる中小企業が次のようなパターンに分かれてしまっていることです。
パターン1 | 成功戦略は描けているのに、社内の様々な問題で体制が整わず、不況の嵐に仕方なく流されている企業 |
パターン2 | 「何とかしなければ」という思いはあるが、打開策が見いだせず、旧来のやり方に加え、努力と根性で乗り切ろうとしている企業 |
パターン3 | 未だマスコミの発表する経済予測をベースに景気回復をアテにして、何もしていない企業 |
パターン3の景気回復を待つ式の企業はもはや論外です。
今の日本は産業構造そのものの変革が急速に進んでいるため、景気が回復しても自社が回復する可能性は非常に低いのです。
メーカーはメーカーとして、問屋は問屋としての新たな自立戦略を描かないと再浮上はできません。
まして、今回の不況は確実に長期化するという前提で対策を講じていただきたいのです。
マスコミで景気回復説が論じられているのは、心理的な消費低下による更なる不況を避けるためであって、企業の舵を握る指導者である皆さんにとっては正しい現状認識をすることがすべてのスタートなのです。
(前提条件)まず我社はどの位置にいるか
今回の不況対策を考える前に、我社は今どのような状態になっているかを確認して下さい。
今回の大不況の波を泳ぎきるには、2つの絶対条件をリーダーが持たなければなりません。
1つは現在の環境下でも勝ち抜ける成功戦略を持っていること。(タテのベクトル)
2つめは成功戦略を遂行するための推進態勢(もしくはトップのやる気)を整えることです。(ヨコのベクトル)
あなたの痛みを越えて生きている
つまり今、企業は底なしの湖の中に一人でいるようなものです。
"推進態勢"とは底なしの湖な中でも立ち泳ぎができる力のことであり、"成功戦略"とはどの方向の陸地に向かって泳ぐのかを指しています。
換言すれば成功戦略を持っているか否かは"頭脳"の問題であり、推進態勢のあるなしは、"人を動かす力"といえるでしょう。
成功戦略を明確に持ち推進態勢が整ったとき、その向こうには光輝くオアシスがあります。
ところが、その手前には不況の波を引き起こす大魔神が待ち受け、大きなうねりを絶え間なく発しているのです。
今、日本経済にはこのような経済スゴロクができあがり、その中で各企業が逆流する川をオアシスに向かって必死に泳いでいるように思えます。
まず我社はこの構図の中でどの位置にあるかを確認し、そしてその位置ごとに対策を考えてみましょう。
対策1 清貧企業の脱出法 -決して悲観しない-
成功戦略が見えず、推進態勢もない墓場の一歩手前企業です。
ここでいう"推進態勢がない"とは人材がいない、組織が確立していないといった意味ではありません。
たとえ少人数でも、ある方向に向かってそのパワーを集中化させることができれば"推進態勢がある"と判定されます。
たとえば、2~3人の少人数で事業をされているAさんとBさんがいます。
Aさんは、顧客や社員からの様々な要請にすべて自分で応え、心身共に全開で仕事に取り組んでいます。
しかし、自分の考えを確立していないために、すべてにふりまわされた毎日を送っており、業績も芳しくありません。
よってだんだん事業意欲が衰えてきています。
一方、Bさんは、周囲からの様々な要請について、その優先順位をつけ、ムダと思われる仕事は思い切って引き受けないようにします。
結果、もちろん業績も厳しい状況にありますが、将来を見据えやる気満々です。
Aさん推進態勢はありません。
Bさんには推進態勢があるといえます。
ここでは、不況だ、墓場の一歩手前だと悲観しないことです。
逆長期化する不況と仲良くすることを考えるべきです。
不況を恐れていると後ろからどんどん追いかけてくる。
面子を捨てて不況とどうつき合っていくかが清貧型企業の命題なのです。
大手企業の多くは、今この位置にいます。
これまでの戦略が通用しなくなり、社内には大企業病が蔓延し、推進態勢もないのです。
面子を捨て、思い切ったリストラを断行する大手企業は生き残れるでしょう。
面子を捨てられない企業は大手といえども墓場行きでしょう。
具体的には利益に直結しない固定費は思い切って切り捨てる。
清貧の企業運営を味わうのです。
中途半端な清貧では乗り切れません。
そして、その間にこれからの時代に沿った戦略を練り直すのです。
それに耐えられず新しい戦略も浮かばない人は撤退計画を作る。
この決定は1日でも早いに限ります。撤退するにも相当の資金が要るのです。
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対策2 求心力喪失企業の脱出法 -錦の御旗をもつ-
不況の波を乗り切れる正しい経営戦略を持っているのに推進態勢がバラバラなためにせっかくの戦略が絵に描いた餅となっている型です。
私もコンサルタントとして様々な企業のお手伝いをする中で、いちばんストレスのたまるケースがこれです。
このようになる原因はほとんどがリーダー及びリーダーとなるべき人の求心力喪失にあります。
リーダーが求心力を持ち得ないのは、
a.全社員を引っ張れるだけの人徳・資質が伴っていないケース
b.経営戦略に魂が入っていないケース
に分けられます。
ところがaのように全社員を引っ張れる人徳・資質がなくても、bの経営戦略に魂が入り、的確な意思決定を続ければ求心力は充分に持ち得ます。
つまり人徳は後からでもついてきます。
それほど経営戦略に入魂することは意味深いのです。
松下幸之助氏は"正しいことはこれだ"という信念、正義感があるところに人を動かす力が生まれてくると言っています。
「正義感を持つと言うことは、言い換えれば"錦の御旗"を持つということだ。人間は錦の御旗を持てたときに本当に強い勇気なり力が湧いてくるものだ。それが人を動かす原動力になる。」 というわけです。ではどうすれば錦の御旗を持つことができるのか。 「経営者としての仕事に真剣に取り組むことだ。」
と言い切っています。
「仕事に打ち込まないからゴマカシが入る。ゴマカシでは回りの人を説得できない。説得できないからやる気も湧かず打ち込めない。この悪循環こそ問題だ。」
経営者として最重要の仕事は自社の経営戦略について考え続けることです。
徹底的に調べ、相談すべき人に相談し、考え抜くことです。
ならば、自分の考えが信念に変わっていきます。
経営戦略に対する信念が人を動かし、自分も動機付けるのです。
今、自分の考えている戦略は正しいのかどうか常に不安が伴うでしょう。
しかし、経営戦略の正しさを証明するのは結果を出すことにしかほかありません。
結果を出すには、自分が考え抜いた戦略を信じ、その経営戦略を錦の御旗にして真っしぐらに突き進むのです。
対策3 集団自殺企業の脱出法 - 過労死に注意 -
成功戦略が見えていないのに、旧来のやり方を変えず、 努力と根性で不況を乗り切ろうとするのが集団自殺型企業です。
私はこのような企業を目の当たりにした時、南アフリカに生息するスプリング・ボックという鹿の話を思い出します。
スプリング・ボックは不規則にその生息地を変え、数十年に一度、まことに奇妙な集団行動を起こすのです。
"垂直注視眼振"
まず、数匹のスプリング・ボックが突然草原を走り出す。
するとそれにつられて他のスプリング・ボックも集まってくる。
後ろのものが前のものを押すので、先頭を走るものはさらにスピードを増す。
するとその横や後ろにいるものは敵の攻撃を恐れて前のものを押しながらとてつもない大群となっていく。
そしてこの奇怪な行動は恐ろしい結果につながるのです。
大集団となって走りだしたスプリング・ボックの群れは、もはや決して止まることを知らず、ついに断崖からなだれ落ちるように次々と落下し、一匹残らず海に呑み込まれ、死んでいく。
今回の不況はこのような企業をも作り出しています-。
同業他社の追い上げを恐れ、売上拡大主義のみで走っているものの、却って利益を落としている問屋業。
値引き合戦でシェアを上げているが、財務体質がもともと脆弱なために資金繰りが逼迫しているメーカー。
これらの企業の特徴はリーダーが独特のリーダーシップを持ち、そしてリーダーの打ち出す方針に対し、社員がスプリング・ボックのように懸命に努力し、走り続けていることです。
この社員の努力が実を結ぶ確率はまことに低いものです。
否、その努力が人件費の上昇を招き、会社の財務体質を悪化させる要因にすらなり得るのです。
時には過労死という悲しい結果を招くかも知れません。
集団自殺型の企業はそのリーダーの性格・資質がそのまま企業運営に反映されます。
・計画性に乏しく、行き当たりバッタリである
・権限の委譲が苦手で、いつも忙しくしている
・意欲と負けん気だけは人一倍強い
こんなタイプのリーダーは要注意です。
集団自殺型の企業では、まず、会社全体の動きにブレーキをかけて下さい。
リーダーも社員も休息してエンジンを冷やすのです。
そして進むべき方向を見極める時間をじっくり割いて考えていただきたいのです。
(経営者大学、Y.M.S.のOBの方は、中経策定プログラムにぜひご参加下さい。3日間かけて一緒に考えましょう。)
対策4 エアポケット企業の脱出法 - 業革運動を起こせ -
これまで順調にやってきたが逆風に遭い、思い違いの結果が出てくる。
そこでリーダーが今まで考えていたことは正しいことなのか、今後もこのやり方でよいのかという不安にかられ、どうすればいいのかわからない状態になっている企業です。
この状態が続くと同業他社の打つ施策が気になり始め、同業他社の方法を模倣することで対策を打った気になってしまうのです。
その対策が自社にフィットしていなくてもその施策がまかり通ることになります。
エアポケット型の企業は一つ間違えば一挙に墓場に向かう危険性を秘めています。
それはこれまでのやり方に固執するばかりに経営環境や社内のムードとのギャップが生じるためです。
・高付加価値、高単価商品への体制を整えたばかりなのに市場に受け容れられない
・提案型営業を推進しているが手間ひまばかりかかって成果に結びつかない
といった現象が現れ始めたら危険信号です。
エアポケットに入った企業はこれまでの戦略・戦術を捨てる必要はありません。
戦略は微調整をする程度でいいでしょう。
それよりもエアポケットから抜け出すための社内態勢、「仕事の進め方の革新=業務革新運動」を起こすことに注力すべきです。
これは一人ひとりのパワーを大幅に引き上げ、業績に直結させる運動にほかなりません。
ムダな作業ムダな時間を徹底的に省き、業績を挙げるための作業・時間に傾注するのです。
たとえば、1日5軒しか廻っていなかったセールスマンに倍の10軒を廻らせるようにする。
それに伴う付随作業の進め方を根本的に改める活動をするのです。
これは全社的な運動-業革運動-として展開しなければ成功しません。
対策5 あと一歩企業の脱出方法 - 一点に集中せよ -
人材も概ね揃った、商品力、営業力もそれなりに高まってきている。
だのに業績に繁栄しないという企業です。
魚つりには「たなボケ」という現象があります。
魚も集まっている、エサも道具も問題ない、しかし釣れない。
こんな時ベテランの釣人は浮きから下の長さをほんの数センチ調整させて大きな成果をあげるそうです。
つまり釣果をあげるための諸条件の中の一点に絞って打開するのです。
不況期でも業績を確保するには、商品力、営業力、社内のムードなどの諸条件にバランスがとれていなければなりません。
特に商品力がものをいいます。そこでまず自社が取り扱っている商品群を細かくきりきざんでみます。
ならばその中には今でも引き合いの多いものとそうでないものが混在していることがはっきり見えてくるはずです。
そこで引き合いの多い、自社の得意とする商品に集中して販売をかけるのです。
ここでは一時他の商品を犠牲にすることもあるでしょう。
しかし思いきってその商品に経営資源を投入するのです。
ならば部分的ではありますが目の前の壁がぶち破れていきます。
オアシスが見えるのです。
この方法は中小企業だからこそ可能な打開策であり、大企業ではなかなか実行できません。
業績に反映されないからといって、あせって何にでも手を出すのは経営ではありません。
得意分野に重点を絞らないと効率はますます低下し、人材のエネルギーをも放出してしまうことになるのです。
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