職業性腰痛に関する最近の研究で,その法外な経済的代償に関する貴重な情報が得られた。しかしながら,その研究は労働者の腰痛愁訴の原因について非常に疑わしい主張をしている。
その研究では米国内の腰痛による欠勤日数を年間ほぼ1億5,000万日と見積っている。これを1995年の賃金レベルで計算すると,賃金分だけで約140億ドルになった。How-Ran Guo博士ら
は,「腰痛の問題は非常に大規模で,たとえば全体的な有病率(prevalence)のわずか1%の低下でも,このような病的状態はかなり減少し,数十億ドルもの節約になります」と述べている(Guo et al.,1999.を参照)。
物議をかもす主張
物議をかもした論文の中でその研究が主張しているのは,腰痛による欠勤者の多くは業務上の作業によって引き起こされたものだということである。「腰痛で欠勤した1億4,910万日のうち,1億0,180万日(68%)は仕事に関連した腰痛患者の欠勤日数でした」とGuo博士らは述べている。
しかし,この結論の根拠は疑わしい。なぜなら,労働者自身による腰痛の原因の評価を根拠としているからである。「労働者グループに対して,仕事に関連した事柄が腰痛の原因かどうかと尋ね
ることは無視できない先入観を生み出します」と,Canadian Back InstituteのHamilton Hall博士は言う。
この質問は多くの点で,作業が腰痛の主要原因であるという根深い文化的観念を探るものである。同じく質問に回答する労働者には,腰痛と作業を結びつける強力な誘因がある。つまり,そうしなければ彼らは腰痛症状に対する補償を受けられないのである。
科学的根拠の大部分は,職業上の身体的暴露が持続的腰痛を引き起こす主要原因ではないことを示している。スコットランドの研究者Gordon Waddell博士は,「仕事が腰部の健康状態に害を及ぼすという説得力のある根拠はほとんどありません」と,著書『The Back Pain Revolution』の中で述べている(Waddell.,1997.を参照)。
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